国際コミュニケーション学科を卒業後、英語の先生になる人たちって実は多いんです。現在神奈川県の公立中学校で英語教員として活躍するS・Kさんもその一人。同期で教員を目指してた5人の仲間たちのうち、4名が現役の教職についたという代。「勉強嫌いだったのに、今は勉強を教える側。とても楽しいですよ」と笑うS・Kさんに、7年ぶりにキャンパスに来てもらい、学科にいた頃の思い出から、今の仕事に至るまでの道のりを語ってもらいました。

英語教員になろうと志したのはいつ頃だったんですか?

「高校を卒業する頃には、得意だった英語の先生になりたいな、と思い描いていました。本当は1番得意だった体育の先生になることも考えていたのですが、高校1年生の時に少4からやってた野球で肩を痛め、スポーツをやめざるを得なくなった。その時に担任だった先生が、僕をものすごく支えてくださいまして。あ、先生っていいなあ、楽しい仕事だなあって思ったんですね。自分が先生に助けてもらったことで、自分もまたどこかの誰かの力になりたいな、と」

大学時代の一番の思い出って何ですか?

「やっぱり今の仕事に直結する、“サマースクール”の体験だと思います。大学2年〜4年まで、3年続けて参加しました。海外からやってくるボランティアたちと一緒に、近隣の子どもたちに英語を教えるのですが、『どうすれば英語の授業が楽しくなるか』を学生自らが考えるというのは、本当に貴重な体験でした。

サマースクールの場合は『教え方』そのものを、根幹から自分たちで開拓していくんです。いろんな国からやってきた外国人と一緒にプロジェクトを遂行していくので、とにかく『自分たちで考える必要がある』ことの幅が限りなく広いんですね。

基本のキから、自分たちで英語教授法を組み立てる感じ。考えることが多い分、バイトをしていても気づけばサマースクールのことだけを考えていたなんてことはしょっちゅう、笑。その分、本当にやり甲斐がありました。自分たちが教えた中学生から最終日、『明星サマースクールに来て本当によかったです、また来ます!』なんて言われると、忘れられない思い出になりますよ」

教職課程の実際はどんな感じでしたか?

「1年入学当初に教職課程を履修した人は20人あまり。それが最終的に卒業時には5人ほどになっていました。教職課程は忙しい。だから勉強し、ビザのバイトで小遣いを稼ぎ、サマースクールをやっていたら、それだけで一日の時間のほとんどがなくなりました。

なぜ初志貫徹できたか? それはたぶん、仲間の存在が大きかったと思います。学科へいけば同じ方向性を目指す同級生がいる。で、互いに励まし合う。勉強が苦手だった僕も、仲間がいたおかげで、気づけば教育実習が終わっていた。つまり。例え勉強嫌いだったとしても、環境さえ整っていれば、僕のように教員になれるってことです。人はきっと自分が興味があることは、苦手でも頑張れるんだと思います、笑」

とりあえず教職免許を取って一旦卒業、初海外は意外にも卒業後だったそうですね

「そうなんです。まず教職を取るので精一杯だったし、家庭の方針も『自分の人生は自分で決める、留学したければ自分で』という感じだったので、卒業後、すぐに教員になることはせず、お金を貯めて→カナダのトロントに1年ワーキングホリデー留学→帰国後に非常勤教員、という道を選びました。教員になる前に一度は留学をしたかったんです。

半年分の学費と、当面の生活費合わせて100万円余りを持参で、カナダに渡航。斡旋されたステイ先がご飯を出してくれない家だったというトラブルなどに遭遇したものの、ステイ先を変え、学校も続けるうちにメキシコ人の友達もでき、シェアハウスに移り、コーヒーショップで仕事も始めました。

とにかく最短で英語を習得したかったので、ネイティブだけと触れ合う毎日を意識して生活しました。おかげで仕事も楽しくなって信頼も得、仕事先から『VISAを発給するから滞在を2年延長しない?』という話もいただいたのですが、このままいたら教員への自分の夢がブレると判断し、当初の計画通り、日本に帰国しました」

夢と現実、微妙なラインで落としどころを見つけて歩いてきたのですね

「はい。帰ってきてからは、本当にタイミングよく非常勤の仕事が見つかり、翌年にはトントン拍子で採用の話も決まりました。担任も持たせてもらってうれしかったです。

でも。実は僕、勉強が苦手だったんですよ。だから教員になる上で、教員採用試験が僕にとって、一番大きな壁でした。この試験を突破するために、とにかく今までの人生でなかったくらいに、猛烈に勉強しました。それを経ての今。クラスに勉強嫌いの子がいると、まるで自分を見ているような気持ちになるんです。勉強嫌いの僕でも、なんとか頑張れば最終的に教員になれたわけですから、勉強が苦手で心が折れそうになっている子にこそ、共感力を持って寄り添ってあげたいなといつも思っています」

同じように教員を目指す後輩に、何か伝えたいことはありますか?

「僕のたった一つの後悔は、『勉強をあまりしてこなかったこと』。社会人となった今、そこだけは後悔を感じるし、機会があれば大学でやっていた英語の教授法を、もう一度しっかり勉強したい。

僕は、大学生活を“努力”より“楽しい”を重視して過ごしてきてしまったので、その分のツケを今払っているような部分もあります。たっぷり勉強に集中できるのは学生のうちだけ。その時にしかできないことは、その時にやっておいた方がいいですよね。

教員という現場に入ってみれば、紋切り型の方程式が通用しないことも多々あり、そういう場合の課題解決に関しては、明星サマースクールの経験がおおいに役立っていると感じます。ですから教員を目指す学生さんなら、やはりサマースクールはやっておいた方がいい。

S・Kさんのこれからは?

「教員という仕事は、本当に楽しいです。中学1年生の担任なのですが、とってもかわいい!僕はこの子たちに英語の楽しさ=海外の人とコミュニケーションする面白さを存分に伝えていきたい。

教員という仕事を通じて子どもを教育しているというよりは、むしろ、僕自身が子どもたちに一緒に成長させてもらってるって感じです。これからももっともっと成長していきたい。国際コミュニケーション学科からも、僕のような、サマースクールの教授法を現場で活かせる教員がもっともっと出てくるといいですね」