続々と “隣人は外国人” という状況が増えつつある令和の日本。バイト先でもそう、電車の中でもそう、学校でもそう。
国籍は違うけれど同じ空間で過ごしている→良いコミュニケーションをしていきたい。そんな時代が日本にもやってきました。
私たちはコミュニケーション学科。難しいコミュニケーションをどうしたらクリアできるのか。を日々研究しています。
今日のテーマは→同じ日本語でも、相手に伝わらない日本語を話すのではなく、どうやったら “相手に伝わりやすい日本語” で話すことができるのか。
そこで、東京にほんごネット代表の有田玲子さんにいらしていただき、【社会と「やさしい日本語」】と題して、学科生+外部からの聴講生に、『相手に伝わりやすい “やさしい日本語” 』について詳しく解説していただきました。
以下、有田先生のご講義より抜粋。
災害などの緊急時、『頭部を保護してください』という言葉が、どれだけ日本に住む外国人に伝わると思いますか?
これを “もっとやさしい日本語” にしてみましょう。
「ヘルメットをかぶってください」かな? いやこれは、ヘルメットというカタカナの意味を多くの人が理解はできないはず。
カタカナっていうのは、外来語も多いのですが、発音も変わってしまっていたりするので、案外伝わりにくいんです。
だとすれば。「帽子をかぶってください」はどうですか?
ご名答!これは外国人にとっては、一番簡潔で分かりやすい日本語ですね!
みなさんは、今地震があって『頭部を保護してください』というアナウンスがあったら、どうしますか?
実際にやってみると……そうそう、こちら側の人がやっているみたいに、机の下に潜る人も多いですよね。
でもそれができるのは、私たちが幼小中高大を通して、頭部を守るために机の下に避難するという教育を受けているから。
そういう経験がない外国人は、言葉の意味がわかる人で、せいぜい手で頭を覆う程度です。
だから、外国人に言葉で伝えるときには、極力抽象的な言葉を避け、なるべく具体的に相手に伝えると良いです。
「帽子をかぶってください」は、まさに “やさしい日本語” です。
別の例文もやってみましょう。
「こまめに手洗いをする」 これはどうですか?これ、案外難しい。彼らにとっては分かりにくいです。
みなさん、どうですか?どんな風に言い換えれば良いかな?
「1日に何回も手を洗う」はどうでしょう? これが “やさしい日本語” 。
“こまめ”というのは、通訳さんでも分からない単語だったりするんです。だからそこを汲み取って、“こまめ”を具体的な言葉に置き換えてあげればいい。数字に置き換えると、ぐっと分かりやすくなりますね。
有田先生によれば、「風がビュービュー吹いています」や「靴がピカピカです」などの擬音語、擬態語も伝わりにくいらしい。
「その場合は、『風が強く吹いています』や『靴がきれいです』と言い換えてあげたらいい」のだそう。
「〇〇していらっしゃる」というような尊敬語も伝わりにくいから、“やさしい日本語” にするためにはあえて尊敬語にしない。
文章は短く切って話す+主語と述語を最後まできちんと話す。
ジェスチャーもたくさん使うとよりコミュニケーションは深まるから、会います、食べます、飲みます、電話します、さあ、全部ジェスチャーにしてみよう!
学科の学生も、外部からの聴講生のみなさんも、有田先生のパワフルで面白いトークにすっかり釘付け。
普段何気なく使っていた日本語も、こうして改めて母語じゃない人の立場に立って言葉を丁寧に使ってみると、全然別の世界が見えてくるから、本当にフシギ。
「日本語って解釈もいろいろできる場合があって、それも難しさの一つなんです。例えば『日本にはどのくらいいらっしゃいますか?』という言葉は、
来日してから今までどのくらい経っているかとも考えられるし、ここから先旅立ちまでどのくらい?ともとれます。このほかにもあと2種類の解釈ができるのですが、みなさんは分かるかな?」
「ほかにもこんなのもあります。『台風の影響により全線不通となっています』。私たちにはお馴染みの “全線不通” ですが、よく音を聞くと→ “フツー” ですよ、笑。
“不通” は “普通” と聞こえますよね? そうなると“ 全線普通” という解釈もできます。
この場合は、『台風がありました。だから電車は全て止まっています』という言葉を使った方が、よりやさしい日本語になりますね」
有田先生の明るいトークと、クイズ形式の楽しい授業で、90分の授業はあっという間でした。
学科生たちも、内容の面白さに加え、前後左右の仲間たちとわいわい盛り上がれて大満足。
外部聴講生も、たくさんの面白い視点を獲得できたとみえて「本当にタメになりました!」
年々日本に住む外国人の数は増え続けています。ここから先は、大学の周辺も “多文化共生社会” 。
次回は6/10(月)、隣人は外国人時代を上手に泳いでいくための国際文化論公開セミナー【多文化共生と多摩地域の現状】です。お楽しみに!