実社会で活躍する外部講師を招聘しての国際文化論セミナーも、今日が最後。
最終回となる今回は、横浜市国際交流協会で多文化共生推進課長を務める、社会福祉士の門先生に、お話を伺いました。
そもそも。よく小耳に挟む「外国人問題」ってなんでしょう?
「身近でも話を聞いていると思います。例をあげると、『ゴミの出し方が外国人はなってない』とか『騒音がうるさい』または『日本人が使わない香辛料を使っていて臭い』など、探せば色々あると思います。それらを総称して “隣の迷惑外国人” と地域内で噂がはびこり、話が何度も流布されることによって、直接コミュニケーションを取ったわけでもないのに、“隣の外国人” に対して、悪感情を抱いてしまうことも、実際には起きていると思います。
そんな時にはどうですか? ただ、『日本では違うやり方をするんだよ』と説明してみれば良いのではないでしょうか?」
日常的に、在日外国人と日本人との間に立って、多文化支援を行なっている門先生のもとには、いろんな話が飛び込んでくるらしい。
■ 隣の外国人が、お布団をガードレールに干している→本国ではガードレールの上に干しても問題ないかもですが、日本は基本的に公のモノは個人使用しないので、家のベランダで干してくださいね→解決。
■隣の外国人が、魚をマンションの公共スペースで捌いていた→家の中に匂いがこもるのが気になったのかもしれませんが、これも日本ではしないことなので、家の中でやりましょう、とお伝えする→解決。
■隣の外国人が開催するホームパーティーがうるさい→ 週末にパーティーを開催するのは本国では当たり前かもしれませんが、日本はそうでないので、パーティーを開催する時に近隣の人と良いコミュニケーションを取り、ちゃんと挨拶をする。そして終了後は必ずお礼をするようにする→解決。
■ 隣の外国人が干す布団がいつも、自分の家のベランダにまで覆い被さっているから、不快だった→これも日本には日本的な空間に対する “繊細な縄張り意識” があるので、それをちゃんとお伝えする→解決。
「これらの問題に関しては、相手とのコミュニケーション、つまり “顔の見える関係” または“信頼関係” “繋がり” といったものが、多くの部分を解決してくれます。社会的にバルネラブル(弱い&傷つきやすい)な人々を、コミュニティから排除することなく、彼らが社会参加できるよう取り組んでいくことが、今、隣に外国人が増えてきた日本社会で、求められています。これは “地域福祉” と密接な関係があります」
福祉、とは。
→「最近流行りの言葉でもある ウェルビーイング(Well-being)、つまり全ての人々が命を大切にし、暮らしを豊かに生き甲斐を見つけることを支えるのが、福祉の活動です」
地域、とは。
→「よりきめ細やかな&質の高い福祉社会の実現するために必要不可欠なのは、普段私たちが日常生活を営む範囲の “ローカル” (地域的)単位で考えること」
「そこでさらに出てくる視点が “ソーシャルワーク” です。地域福祉において何か問題が起きたとき、その問題のみを解決しようとするのではなく、その背景から環境までをも紐解き、人だけでなく、環境、さらにはその問題との接点にまで働きかけて、解決をしていこうとする実践アクションです」
学科企画の今回の講座は、多文化共生社会の実現を目指して働く外部講師+学科の学生+一般参加者+SA(スチューデントアシスタント)まで、参加者の属性、年齢等も横断的な中で行われました。最後にそれらのメンバーをシャッフルしてチームでの話し合いが行われるのが、さすが、国際コミュニケーション学科の授業!
チームの中には、一般参加者だけでなく、学科の先生も積極参加。
「そしたら。各チームで、多文化共生社会に向けて、こんな取り組みができるかも!?という取り組み例(企画)を、考えて発表してください!」
15分の話し合いの後。それはそれはたくさんの案が出てきました。
「小中学校の英語や地域活動の授業の中で、隣の外国人についての地域課題を共有し、やさしい日本語でイラストポスターなどを作り、その地域に貼ってまわる!」
「多文化交流フェスティバルを考えました。国を超えていろんな料理が食べられるよ!というお祭りメインの企画を立て、世界各国屋台をオープンさせて各自民族衣装などで盆踊りに参加する。町内会主催でそういう取り組みが行われたらいいですね」
「団地でGo!という企画はどうでしょうか? 団地のマイノリティの外国人と高齢者を互いに交流、相互支援まで持っていく関係性を作る企画です」
講義の後は、学科の教員と門先生らで、学科の学生さんがこの活動を言葉だけで終わらせない→実際の場で活動をしていくための、情報交換会を実施。
私たち国際コミュニケーション学科が、日本の多文化共生社会に貢献する活動のシナリオは、着々と仕上がって行っています。